聲聲慢
尋し尋して 覓め覓めて,
冷冷たり 淸淸たり,
凄凄たり 慘慘たり 戚戚たり。
暖にして 乍ち 還(ま)た 寒き 時候,
將息 最も難し。
三杯 兩盞の 淡酒は,
怎(いかん)ぞ 他(それ)に敵はん、 曉來の 風 急なるに。
雁 過ぐる也 ,
正に 傷心,
却って是れ 舊時の相識たり。
滿地の黄花 堆積すれど,
憔悴して 損はれ,
如今 なんぞ 摘むに堪へん。
窗べによりそひ 君をまてど,
獨りにて 怎生(いかん)ぞ 宵までを すごさん。
梧桐 更に 細雨を兼(くは)へ,
黄昏に到りて、 點點 滴滴。
這(かく)なる次第,
怎(いかん)ぞ一個の、「愁」字に了し得ん。

